技術紹介
当社のコア技術は『単分子誘電体』という機能性素材です。
単分子誘電体(Single Molecule Electret、SME)とは、単一分子かつ室温で強誘電性(メモリー効果)を示す唯一無二の素材です。強誘電性とは、電場により分極(電荷の正と負)を示し、 電場を切っても分極を保持する性質のことです。強誘電体は電気を溜めるコンデンサや、情報記録媒体等の幅広いデバイスの材料として用いられています。 しかしながら、従来の強誘電体は結晶構造由来の巨視的な特性であるため、微細化することで分極を保持できず、その特性を失ってしまいます。一方で単分子誘電体は強誘電特性から「結晶」という概念を切り離し、単分子で恰も強誘電体の様な振る舞いを発現する革新的な材料です。 これ特性により、従来の強誘電体デバイスの限界を打ち破った製品開発が期待されています
単分子誘電体は、30個のタングステン、110個の酸素、5個のリン原子からなる『プレイスラー型ポリオキソメタレート(POM) 』というアニオン性無機クラスター分子でです。POMは内部に籠状の空洞をもち、その中に1つの金属イオンが格納されています。POMに格納された金属イオンは、空洞の中心からずれた2箇所の安定サイトのいずれか一方に存在しており、金属イオンがどちらかの安定サイトに停止することで、その停止位置に対応した方向の分子分極が発現します。
加えて、単分子誘電体の技術的な特徴としては、分子設計によってメモリ特性や化学的性質のカスタマイズが可能な点があります。具体的には、POMに包接した金属イオン種を変えることで、イオン移動に必要な活性化エネルギーを変化させたり、POM自体の骨格や電荷中和に用いるカウンターカチオンをカスタマイズすることで、溶解性や耐熱性などの化学特性を制御することが可能です。これらの特徴は一般的な強誘電体には無く、幅広いデバイス応用に期待できます。